敷金償却とは?敷金と保証金の違いや償却・仕訳方法を徹底解説

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

賃貸物件を借りる際に目にする、『敷金償却』。
償却ってなに?敷金が返ってこないの?と不安を感じる方もいるのではないでしょうか。

ここでは『敷金』『償却』について、契約時に気を付けるべきポイントを踏まえつつご説明します。
また、物件を借りる際に償却金も含めた発生するコストの削減方法、原状回復費・クリーニング費と償却金の仕組みについても解説していきます。

敷金償却への理解を深め、入居時・退去時どちらもトラブルが起こらないよう対策をしましょう。

1.敷金償却とは
 1-1.敷金は通常償却されるの?償却方法をご紹介
 1-2.【経理向け】敷金の仕訳方法
2.償却金は交渉できるの? 費用削減して物件を借りるには?
3.償却分以外の敷金は返還されるの?償却金と原状回復費・クリーニング費の仕組み
4.まとめ

1.敷金償却とは

ここでは、敷金償却とは何か、また敷金と保証金の違い、敷金の償却方法、仕訳方法をご紹介します。
まず『敷金償却』は、物件を借りるために担保として預けるお金のうち、解約時に返還されないお金(借主の手元に戻らないお金)のことを意味します。

また、『敷金償却』『保証金償却』『敷引き』は、いずれも同じ意味合いで使われます。
敷金と保証金の用語は明確な区別がされておらず、どちらも同じ意味を持つからです。

貸主側の定義によって、契約ごとに『敷金』『保証金』という用語が使い分けられているだけであって、法的効果や契約内容は、用語で決まるわけではないです。

1-1.敷金は通常償却されるの?償却方法をご紹介

契約時に償却の記載があるものは、償却金がかかります。

賃貸検索サイトには、償却について下記のように記載されます。

また償却方法は、大まかに以下の2つがあります。

・解約時償却○カ月分
解約するときに、敷金償却される契約形態です。何カ月分が償却されるのかは、契約時に決まっています。
例えば敷金3カ月分・償却1カ月分の契約内容の場合、償却分を差し引いて、残りの2カ月分だけ退去後に返還されます。

・実費償却
原状回復・クリーニングに要した費用を、敷金償却される契約形態です。
退去時に原状回復やクリーニングにかかった実費を償却金として差し引かれ、残り敷金だけが返還されます。
予め何カ月分償却されると決まっている契約形態ではないので、部屋の使用状況によって償却額が決まります。

敷金償却に関する契約は原則として有効ですが、償却額が高額過ぎる場合は、契約が無効になる可能性もあります。

国土交通省 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン事例42に、賃借人Xが賃貸人Yに対して、原状回復費用の返還を求めて提訴した下記事例があります。


◆事例内容
賃借人Xは契約締結時に、保証金約定に基づき40万円を交付。物件を明け渡し時、締結した契約内容通り、賃貸人Yは通常損耗についての原状回復費用21万円を控除した19万円を賃借人Xに返還。
賃借人Xは消費者契約法10条に違反するもので無効であるとして、21万円の返還を求めて提訴したところ、原審は賃借人Xの請求を棄却したため、上告がなされました。

◆判決の趣旨
“上記経過年数に応じて上記金額の2 倍ないし 3.5 倍強にとどまっていることに加えて、賃借人Xは、本件契約が更新される場合に1カ月分の賃料相当額の更新料の支払い義務を負う他には礼金等他の一時金を支払う義務を負っていない。そうすると、本件敷引金の額が高額に過ぎると評価することはできず、本件特約が消費者契約法 10 条により無効であるということはできない。”

ー国土交通省 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン事例42 2判決の趣旨(3)の一部引用(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/honbun2.pdf


上記より、償却額が高額過ぎる場合とは、償却額が賃料の3.5カ月分を超えるかどうかが一つの目安になります。また、『礼金や更新料を支払っているか』『近隣の賃料相場との比較』等も考慮され、契約の有効性が問われます。

■契約時のポイント
契約時には、償却金が発生するか否か、しっかりと確認をとりましょう。
また償却金の中に、退去時に発生する原状回復費・クリーニング費が含まれているのかどうか確認することも重要です。

1-2.【経理向け】敷金の仕訳方法

契約内容によって敷金の仕訳方法は変わります。
まずは、敷金が償却されるか否か、契約時に不動産の業者から渡された「不動産賃貸借契約書」か「重要事項説明書」を確認しましょう。
ここからは敷金が償却される場合と、償却されない場合、それぞれの仕訳方法をご説明します。

・敷金が償却される場合の仕訳方法
契約書に『敷金償却』『敷引き』と記載されているなど、敷金は返還されないものとして契約した場合、費用として計上することが可能です。
計上の仕方は、敷金が20万円未満のときと、それ以上のときで変わります。

【敷金が20万円未満の場合】
支払い時に費用として計上することが可能です。
費用計上できるため、科目は『長期前払費用(※1)』として計上しましょう。
※1 長期前払費用…前払費用のうち、貸借対照表日の翌日から起算して1年を超える期間を経て費用となるもの

【敷金が20万円以上の場合】
一度に敷金を計上することはできず、敷金を一定期間で平均したものを計上していく必要があります。基本的には5年間で償却(※2)していくのですが、契約期間が5年に満たない場合は物件の契約期間で均等にならしていきます。
1カ月あたりで支払う金額を『長期前払費用』として計上し、残りは『差入保証金(※3)』に計上します。
※2 ここでいう『償却』は、敷金などのお金を一定期間で少しずつ計上することを指す
※3 差入保証金…敷金や保証金など将来返還されるお金を仕分けるためのもの

・敷金が償却されない場合の仕訳方法
敷金が償却されない(借主に返還されるもの)として契約した場合、費用としては計上できません。勘定科目は『差入保証金』として分類します。

・解約時の仕訳
物件解約時は、汚損・破損してしまったものを修復して立ち退く必要があります(原状回復)。原状回復・クリーニング費用は、『修繕費』として計上します。

敷金の仕訳方法について、詳しくは下記記事で説明していますので、参考にしてください。
【初心者必見】敷金の仕訳は、実はとても簡単だった!

2.償却金は交渉できるの? 費用削減して物件を借りるには?

入居時に支払った敷金が、退去時出来るだけ手元に残るように、償却金を減額したい気持ちはよくわかります。ですが、募集時に償却金が発生する表記になっている場合、償却金そのものを無くすのは難しいです。

そのため、償却金を減額することだけに目を向けず、トータルで発生するコストを交渉すると良いでしょう。初期費用、退去時それぞれで発生するコスト削減のための、交渉方法を紹介します。

◆初期費用を出来るだけ安くしたい場合
・月額賃料、敷金、礼金の減額交渉
・フリーレントをつけることができるか交渉

◆退去時に返還されるお金を多くしたい場合
・償却金の減額交渉
・原状回復費が大幅にかからないデザイン・レイアウトの検討

また、物件選定時には鍵の交換代など細かい費用もチェックすることで、トータルコストが見えてきます。具体的にかかる費用はどのくらいなのか確認し、またどの費用なら削減できるのか仲介業者に相談してみましょう。

3.償却分以外の敷金は返還されるの?償却金と原状回復費・クリーニング費の仕組み

敷金とは、物件を借りるために(賃料未払いや借主が破損・汚損した際の修繕費の)担保として貸主に預けるお金のため、賃料未払いや借主による汚損・破損がない場合は、償却分以外の敷金は返還されます。
ただ、『1-1.敷金は通常償却されるの?償却方法をご紹介』でご説明した通り、償却金に原状回復・クリーニング費は含まれているのか、別途請求されるのかを確認する必要があります。

退去時、事業用物件は原状回復費、住居用物件はクリーニング費の名目で請求されるケースが多いです。その際、借主負担になるものは何か、事業用物件と住居用物件に分けてご説明します。

事業用物件原状回復費・クリーニング費(どちらかの名目で請求されることが多い)
共に借主負担
住居用物件・通常消耗や経年劣化、自然災害などによるもの→貸主負担
・故意・過失、通常の使用方法に反する使用によるもの→借主負担

住居用物件の原状回復・クリーニングに関しては、下記記事で詳しく紹介しています。
あなたの敷金はいくら戻ってくる?読めば損をしない敷金を返還させる手法教えます!
『1-2.退去時の原状回復』にて、エリアごとの借主/貸主の負担の境界線を紹介しています。原状回復のトラブル回避として、荷物搬入前に部屋に入って傷などの状況をチェックし、管理会社や貸主と共有することが大切です。

さらに、原状回復費・クリーニング費が発生する場合、主に下記2つの方法で貸主より請求されます。
請求方法は貸主によって変わるので、どのように請求されるのか、トラブルが起こらないよう、契約時に確認をしておきましょう。

①償却分を抜いた敷金から、原状回復費・クリーニング費を差し引かれる
解約時、敷金から、償却金・原状回復費(クリーニング費)が引かれた状態で、借主に返還されます。

②償却分を抜いた敷金は返還され、原状回復費・クリーニング費は別途支払う
解約時、原状回復費(クリーニング費)は差し引かず、償却分を抜いた敷金が借主に返還されます。そのため原状回復費・クリーニング費が発生する場合は、借主が別途支払う必要があります。事業用物件はこのパターンが比較的多いです。

また原状回復費については、下記2記事で詳しく紹介していますので、ご参考ください。

原状回復費用の相場と安く抑えるためのポイントを紹介
事務所・店舗・賃貸マンションの原状回復費用の相場や、原状回復費をめぐるトラブル事例、トラブルを防ぐための注意点を紹介しています。

専門家が教える原状回復と東京ルール徹底解剖
東京ルール(住宅紛争防止条例)の条文解説や、退去時に損をしないための裏ワザを紹介しています。

4.まとめ

敷金償却とは、敷金の中で解約時に返還されないお金であり、貸主によって償却額や償却方法は変わります。入居時は他契約内容と共に償却についても把握し、また償却金がかかる場合は原状回復費・クリーニング費が含まれているのかどうかなども事前に確認すると、トラブルが起こりにくくなります。

不当な請求をされた場合に泣き寝入りにならないよう、入居時・退去時共に契約内容について不明点が無いよう、しっかりと確認していきましょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。