成功企業に学ぶ「社員登用制度」!実態から運用方法まで徹底解説

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ユニクロやGUを展開するファーストリテイリング、ディズニーランドを運営するオリエンタルランドを筆頭に、「社員登用制度」を行う企業が注目されています。
「社員登用制度」とは、パート・アルバイト・契約社員などから正社員に雇用形態を転換する制度です。
人手不足を解決するための一手として注目される一方、採用・人事の仕組みを変更する必要があるため、「制度を作りたいが何から着手していいか分からない」という人事担当者もいるでしょう。また、「制度はあるけど機能していない」と悩む担当者も多いようです。
そのような方々に向けて、社員登用制度の実態・成功企業ケーススタディ・運用方法などを解説します。

1、「社員登用制度」のリアルを知ろう
 1-1、非正規雇用者の数はどう推移しているの?
 1-2、「社員登用制度」のメリットとは?
 1-3、制度はあるが運用されていない企業も
2、「社員登用制度」成功ケーススタディ
2-1、社員登用制度の成功事例『ファーストリテイリング』
 2-2、社員登用制度の成功事例『ゾフ』
 2-3、社員登用制度の成功事例『オリエンタルランド』
 2-4、社員登用制度の成功事例『ブリヂストン』
 2-5、社員登用制度の成功事例『京都トヨペット』
3、「社員登用制度」を構築・運用する時のポイント
 3-1、「社員登用制度」を構築・運用する流れ
 3-2、「社員登用制度」運用における注意点
 3-3、「キャリアアップ助成金」の申請の検討
4、まとめ

1、「社員登用制度」のリアルを知ろう

まずは様々なデータやメリットの整理を通して、この制度の実態を把握しましょう。

1-1、非正規雇用者の数はどう推移しているの?

「正社員登用制度」が注目されている昨今ですが、そもそも「非正規雇用者(アルバイト・パート、派遣社員、期間従業員など)の数」はどのような状態にあるのでしょうか。まずはこの部分から見ていきます。

総務省の調査によると、1990年に約881万人だった非正規雇用者の数は、2014年には約1962万人と2倍以上に増えています。つまり、国内の正社員自体は数が大きく減っているという現状があります。

一方で、特に人手不足に悩む業界では、「正社員登用制度」に活路を求める企業も目立ちます。例えば、次のような業界が「正社員登用制度」に積極的と言われています。

・飲食
・アパレル
・運送
・住宅、不動産
・コールセンター
・宿泊施設など

もちろん、他の業界でも「正社員登用制度」は有効な施策です。人手不足を解消し、優秀な人材を効率的に確保したい企業は検討の余地があります。

1-2、「社員登用制度」のメリットとは?

社員登用制度は、「人手不足を解消する」以外のメリットもあります。さらに企業側のメリットだけでなく、働く側にもメリットがあります。一般的に言われているメリットには、次のようなものが挙げられます。

企業側、働く側両方のメリット
・お互いをよく知ってからの正社員登用なので、ミスマッチが少ない。

企業側のメリット
・効率的な採用活動ができる。
・業務に習熟した人材を確保できる。
・適性を見極めた上で配置ができる。
・採用やOJTにかけるコストが抑えられる
・アルバイト、パートへの好影響がある。

働く側のメリット
・帰属意識が高まりモチベーションが向上する。
・がんばりに応じた報酬が得やすい。役職がある。
・福利厚生が充実する。

メリットがあれば当然、デメリットもあります。
企業側のデメリットは、何といっても「人件費増」でしょう。
働く側のデメリットには、正社員になったことで「残業や異動に応じないといけない」「部下やアルバイトの管理などストレスの増大」などがあります。
このへんをしっかり踏まえた上で、企業側も働く側も「正社員登用制度」を利用することをオススメします。

1-3、制度はあるが運用されていない企業も

企業側、働く側の両方にメリットのある「社員登用制度」ですが、一方で「制度はあるが運用されていない」という企業も多いようです。
厚生労働省の2017年の調査によると、「正社員登用制度がある」と回答した企業は全体の約68%でした。この数字だけを見ると、「社員登用制度」の導入企業は多い印象を受けます。
しかし、その中身を見てみると「登用制度あり・登用実績あり」と答えたのは約41%にとどまっています。つまり、「登用制度はあるが登用実績のない」企業が相当数あるということです。
その原因としては、「実績数が少ないので運用しにくい」「登用の明確な基準がない」などが考えられます。

2、「社員登用制度」成功ケーススタディ

「社員登用制度」をうまく利用して成長や拡大をしている企業は数多くあります。これらのケーススタディを見ていただければ、企業側にも働く側にもメリットがある制度だということを実感してもらえるはずです。5社の事例をご紹介します。

2-1、社員登用制度の成功事例『ファーストリテイリング』

社員登用制度をうまく活用している企業といえば、ユニクロやGUを展開する『ファーストリテイリング』が有名です。
例えばGUでは、準社員や長期アルバイトスタッフを対象に半年に一度のペースで正社員登用を実施。毎回、試験に合格した約100名が地域正社員(転勤のない正規雇用者)になっています。
登用に挑戦できるのは、アルバイトスタッフの中でもグレードの高い方々のみ。所属店舗の推薦の上、試験が受けられます。

〈正社員登用された社員の声〉

正社員登用制度への応募は店長に声をかけてもらったから。
全く自信は持てませんでしたが、後輩たちを元気づけようといつも声をかけている私の姿を見ていただいていたようで、「お客様やお店に貢献しようという思いが大切だから」と勇気づけられました。とても嬉しかったです。

地域正社員になって、自身のキャリアや店舗など先のことを考えられるようになり、責任感も大きくなりました。
https://www.fastretailing.com/employment/ja/gu/jp/storestaff/employee.html

2-2、社員登用制度の成功事例『ゾフ』

メガネショップを全国に展開、従業員数1500名以上の『ゾフ』も正社員登用に積極的です。
登用の対象者は、ショップスタッフとアルバイトです。接客・視力測定・加工などのスキルを身につけた人なら誰でも挑戦できます。実施されるのは年に2回。この制度によって、店長、マネージャー、部長になった方がたくさんいるそうです。

〈正社員登用された社員の声〉
私は最初アルバイトでしたが、正社員になることができました。アルバイトの仕事自体は難しいものではありませんが、やる気をもって働けば誰にでも平等にチャンスはあります。社員になるための試験を受ける前は新しいことを学ぶよりも、自分が3年間働いて学んだ基礎を復習して自信をつけました。アルバイトで経験を積んだことが正社員になってからの自信にも繋がっています。
https://recruit.zoff.co.jp/shop_staff/

2-3、社員登用制度の成功事例『オリエンタルランド』

東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドも社員登用に積極的な会社として有名です。
特にメディアで話題になったのは、2016年4月に800名以上の契約社員を正社員にするという発表でした。それに伴い十数億円の人件費増が見込まれましたが、人手不足を解消するための施策として実施されました。
オリエンタルランドでは、「契約社員→正社員」の登用制度に加えて、「アルバイト→契約社員」の登用制度もあります。働く人すべてがステップアップできる仕組みが用意されているのです。

2-4、社員登用制度の成功事例『ブリヂストン』

タイヤ業界で世界No.1のブリヂストンでは、契約社員から正社員への登用試験を年に2回実施しています。2017年1〜10月の間だけでも150名以上が正社員に登用されています。正社員登用によって、部長職まで出世された方もいるそうです。

〈正社員登用された社員の声〉
学校を卒業後、すぐに入社しました。3交替勤務で、平日の昼間に自分の時間が持てることが魅力でした。ブリヂストンは、努力や能力に応じて、仕事を与えてくれます。
私は契約社員から、職長となり、その後、本社勤務や、海外勤務も経験しました。
http://www.bridgestone.co.jp/saiyou/plant/seizou/welcome/index.html

2-5、社員登用制度の成功事例『京都トヨペット』

トヨタ自動車の販社である『京都トヨペット』では、契約社員およびパート社員から正社員登用する制度を設けています。
対象職種は、ショールーム受付・応対スタッフに限定。周囲の方々からヒアリングした仕事ぶりなどを客観的に判断し、正社員登用の可否が判定されます。
直近では「正社員希望者45名中15名の女性」が正社員登用されているそうです。

〈正社員登用された社員の声〉
産休育休取得後、ASスタッフ(パート社員)として復帰し、その後正社員登用を希望し、正社員になりました。正社員になった今は、仕事と家庭を両立し、充実した日々を過ごしています。

正社員登用制度もそうですが、なりたい!やってみたい!という仕事にチャレンジ出来る環境があるので、今後は女性初のフロアリーダー(管理職)を目指して頑張りたいと思います。
http://www.kyoto-toyopet.jp/recruit/woman.html

ここでは、大手企業を中心に社員登用制度の成功事例を紹介しましたが、最後にご紹介した『トヨペット京都』のように中堅・中小企業にも使える仕組みです。

3、「社員登用制度」を構築・運用する時のポイント

この章は、「社員登用制度をこれから作りたい!さらに充実させていきたい!」という企業の方のための情報です。「社員登用制度を運用するまでの流れ」と「この制度に関わる助成金」についてお話しします。
すでに制度がある企業の方は、3ー1ー④「社員登用制度の実施」
をご覧ください。

3-1、「社員登用制度」を構築・運用する流れる

「社員登用制度」の導入によって、御社の人事制度は大きく変わります。その意味では、経営陣と人事担当者がコミュニケーションを丁寧に重ねながら、慎重に進めていく必要があります。大きな流れは次の通りです。

① 「社員登用制度」に関する情報収集
まずは、他の企業の情報収集をしてみましょう。書籍やネット検索の他、人事情報に詳しい社労士やコンサルタントや研修会社などのヒアリングも有効です。同じ規模の会社、同じ業界、同じ地域などの軸で情報収集をすると良いでしょう。

〈チェックポイント!〉
情報収集を怠って惰性で進めてしまうと、後々、「こんな仕組みにすれば良かった!」ということに成りかねません。情報収集をしっかりした上で先に進んでください。

② 実施コストのシミュレーション
「社員登用制度」の採用によって人件費が増えます。実際にどれくらい増えるのか概算をシミュレーションしてみましょう。合わせて、研修費や採用費が減るという効果もあります。どれくらいの削減が見込めるか算出し、相殺してみましょう。

〈チェックポイント!〉
実施した時のコストを把握した上で、「社員登用制度」の可否を判定しましょう。なりゆきで進めてしまうと、経営を圧迫しかねません。

③ 「社員登用制度」の中身の設計
制度の中身は様々です。御社にフィットしたものにしましょう。現実的にはすべて自社で設計・運用をするのは難しいでしょう。社労士などの専門家に相談しつつ、自社に合った制度をつくる必要があります。

専門家に依頼する前に、最低限決めておくべきチェック項目には次のようなものがあります。
・ パート、アルバイト、契約社員など、どの範囲を対象にすべきか。
・ 具体的な待遇をどうするか。
・採用試験の中身をどうするか(筆記や実技など)。
・上司などの推薦が必要か否か。
・応募資格(スキル)はどのように設定すべきか。
and more…

次の項の3ー2でも触れますが、登用の基準が透明化されていないと不合格になった方から「なぜ何度も落とされるのか」と疑念を抱かれやすいです。そういった方がネットで社内の制度を誹謗中傷するリスクもあります。
みんな(特に落ちた方)が納得しやすい“明確な基準”にすることが何より大切です。

④ 「社員登用制度」の実施
「社員登用制度」を作っても、それが機能していないのでは意味がありません。下記のポイントを定期的に調べ、改善を繰り返すことで充実した制度になっていきます。

〈チェックポイント!〉
・利用目標数をどれくらいに設定するか。
・実際に「正社員登用制度」を利用している人がいるか。
・正社員になった方が組織の中で機能しているか。
・採用活動のコストと比べパフォーマンスが高いか。
and more…

3-2、「社員登用制度」運用における注意点

「社員登用制度」は有用な仕組みですが、使い方を間違えると「現場のモチベーションを大きく下げる」可能性があるので注意しましょう。
例えば、店長のお気に入りの人ばかりが登用されてしまったら、他のアルバイトスタッフのモチベーションが大きく低下。結果的に退職が増えることも考えられます。
こういったことが起きないためには、本社の方が現場のことを知ることが大事です。具体的な方法としては、現場視察、コミュニケーションツールの活用、アンケートなどがあります。

また、求人広告に「社員登用制度あり」と書かれていたのに、「上司が制度を把握していない。どうやったら申請できるのか?」という不満も考えられます。
似たような不満に、登用試験に何回も落ちている方から「納得できない」と疑念を抱かれる可能性もあります。
こういった問題が発生しないよう、社内の啓蒙と制度の透明化を進めましょう。

3-3、「キャリアアップ助成金」の申請の検討

「正社員登用制度」を採用した企業には、「キャリアアップ助成金」が該当する可能性があります。
これはパートやアルバイトの無期雇用の従業員を正社員にした際に1名当たり20〜40万円が助成されるといった内容です(ただし、中小企業に限定されます)。
これからこの制度をはじめたいという企業は、内容を確認した方が良いでしょう。ただし、小売り業、サービス業、卸売り業など業種が限定されたり、労働局長の認定を受ける必要があったりします。
詳しくは、こちらの厚生労働省webサイトをご参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

4、まとめ

ここでお話ししてきたように「社員登用制度」は、企業側、働く側の両者にメリットがある仕組みです。そうはいっても、働く側からの応募がなければ「絵に描いた餅」になってしまいます。機能する「社員登用制度」にするためには、企業側のメリットだけでなく、働く側のメリットも大事です。どんな内容にすれば、「働く側に魅力を感じて頂けるか」という視点を忘れずに設計してください。

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